ベンベニスト博士――タブーの実験をしたために転落した科学者

ホメオパシーに科学的根拠があると困る人々によって、似非科学者に仕立てられたベンベニスト博士は、本当に似非科学者なのでしょうか? ベンベニスト博士が科学者としてどういう経歴の持ち主だったのかをここでご紹介したいと思います。

Jack Beveniste(ジャック・ベンベニスト)
フランス人科学者。

1951年、レベルA の成績で高校を卒業し、1960年、パリ大学医学部を首席で卒業します。1960~1967年の間は、パリ大学にて医学の教鞭をとり、ジュニアホスピタル勤務し、国から認証されたコンサルタント医師になります。

ベンベニスト博士は、原理(パラダイム)に矛盾することを観察した場合、それをより深く考察することにしていました。

ベンベニスト博士がある発見をするまで、異なったタイプの細胞は互いに“協力”しないとみなされていました。たとえば、ある白血球はバクテリアを排除するし、別の白血球は抗体をつくる。赤血球は酸素を運び、血小板は凝固を可能にする等々です。

しかし、ベンベニスト博士は白血球と血小板は腎臓に病変を形成するのに協力していることを発見し、白血球と血小板の協力を可能にしている物質の分離に成功しました。

この物質が有名な、PAF(血小板活性化因子)という神経伝達物質です。PAFという名前はベンベニスト博士が名付けたものです。ベンベニスト博士は、異なった細胞間の協力可能性を世界ではじめて確認した科学者です。

それだけでなく、当時、神経伝達物質は蛋白質性でしかありえないとされていたましたが、ベンベニスト博士の発見した神経伝達物質PAFは、脂質性であることも判明しました。こちらも世界で初めての発見です。

このときのことをベンベニスト博士は次のように語っています。

「科学的に異端であるものを二つも発見するとは、ついてなかった」

ベンベニスト博士はさらに、白血球(好塩基球)の性質を特定する技術を確立し、アレルギー発症において、ある特別な働きをする細胞が、炎症、特に腎臓と関節における病変をつくり出すことに貢献していることを発見しました(*)。

(*40年後に至ってもこの発見は免疫学の知識のコーパスのなかに完全に組み込まれていないし、実際の治療学においてはなおさらです。病気をつくり出すメカニズムについての研究が消されてしまったといわざるをえません。この経緯については『真実の告白――水の記憶事件』(ホメオパシー出版)を参照してください)

1972年、ベンベニスト博士はこの発見をこの分野では最も権威ある雑誌の一つ、『Journal of Experimental Medicine(実験医学ジャーナル)』に発表しました。

1974年、神経伝達物質PAF‐acetherに関するベンベニスト博士の論文の一つが、イギリス科学週刊誌『ネイチャー』に掲載されました。そのなかでベンベニスト博士は、ウサギの神経伝達物質は人間の体内にも同様に存在すると述べています。

1977年、再びネイチャーから論文掲載の依頼を受け、ベンベニスト博士はその中でこの神経伝達物質の構造を明らかにしました。

神経伝達物質PAF‐acetherとアレルギーを引き起こす物質の一つであるヒスタミンに関するベンベニスト博士の研究は1979 年に完成し、『Compte rendus de l’Academie des sciences de Paris(CRAS)(パリ科学アカデミー報告)』のなかにPAFの構造を明確にした論文を発表しました。

『パリ科学アカデミー報告』の歴史を通しても、この論文は国際的な科学雑誌にもっとも頻繁に引用されたものの一つです。

このようにベンベニスト博士の経歴は、科学者として超一流であり、アレルギーと炎症における免疫システムの大家であった科学者です。生涯の間に発表した論文数は300を超えています。

1984 年、フランス首相より「Sir.(卿)」の称号を授与されています。そして、1985 年、CNRS(国立科学研究センター)から癌研究で銀賞を受賞しています。

こうして、科学者として輝かしい功績をもつベンベニスト博士は、ノーベル賞を受賞するだろうと目されていた人物でした(もちろん『水の記憶事件』が起きるまでですが…)。

そして運命の 1988 年、イギリス科学誌『ネイチャー』への「高希釈された抗血清中の抗免疫グロブリンE(抗IgE抗体)によって誘発されるヒト好塩基球の脱顆粒化」と題する歴史的論文の発表によって、彼は転落の人生が始まります。詳細は、『真実の告白――水の記憶事件』をお読みください。

上記の経歴を見るとわかるようにベンベニスト博士をインチキ科学者であるとか、似非科学者であるとか、揶揄することがどれだけ的外れで無知なことであるかが理解していただけると思います。

もしあなたが科学者ならば、ダーウィンが行った実験をやってみてください。ベンベニスト博士が行った実験をやってみてください。水が原物質の情報を保存しているとしか考えられない現象を目にするでしょう。

しかし、その論文が一流科学雑誌に掲載されることはないでしょう。無視されて終わりです。もしあなたが有名な科学者だったら、もしかしたら掲載されるかもしれません。しかし掲載されたが最後、ベンベニスト博士のように研究することができなくなり、笑いものに仕立てられるでしょう。だから結局、誰もやろうとしないのです。

事実は目の前にあるのに、皆で見ないようにしているのです。ある科学者の言葉です。「水が情報を保存するなんて当たり前のことさ。でもそれじゃビジネスが成り立たなくなってしまうだろ。だからみな黙っているのさ。生き延びるためにはとにかく金がなくてはならない。だからそんな事実なんか誰も知りたくない、それどころか全く迷惑に思っているのだよ」

これが現実というものです。

その後、ベンベニスト博士の研究はデジタル生物学に移行しています。ベンベニスト博士のデジタル生物学が正当に評価されていたら、今頃医学は全く違ったものになっていたと思います。デジタル生物学については、そのうち紹介したいと思います。

ベンベニスト博士は、1998年、来日し、ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー(現、カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー)主催で日本初講演を行いました。参加者の中にはソニーの井深氏もいたそうです。ベンベニスト博士はソニーとの共同研究を切望していましたが、残念ながらそれは実現しませんでした。