なぜホメオパシーは嫌われるのか?(その2)――予防接種トンデモ論より引用――

予防接種トンデモ論ドイツ語版出版を記念して、予防接種トンデモ論から一部、ご紹介します(その2)。

本当の免疫を獲得するには
抗体=免疫ではない

 免疫は、病原体や毒をはじめとする異物から私たちを守ってくれる大切なものですが、免疫という特定の器官があるわけではなく、胸腺、骨髄、脾臓、扁桃、虫垂、リンパ節、血液、腸、皮膚などの各器官や組織が協力しあって構成された免疫系によって成立しているものです。

 そして現在、免疫全体における抗体の役割は、とても小さいことがわかっています。したがって、抗体の有無で免疫があるかどうかを一概に判断することはできないのです。抗体価が低くても、あるいはほとんどなくても免疫をもっている人はいますし、抗体価が高くても免疫をもっていない人はいます。クレモン博士という世界ワクチンプログラムを統括する権威者がいるのですが、トレバー・ガンが彼にその質問を投げかけたところ、「個人によって免疫の状況は異なります。抗体が見いだせない人であっても免疫はありえます」、とトレバー・ガンに同意する回答をしています。純粋な免疫学者は、抗体は重要ではないということに反対しないのです。

 これまでの医学は、免疫の獲得について抗体にだけ焦点を当ててきました。少なくともワクチン開発においてはそうです。そして、免疫=抗体という考えが一般的になってしまって
います。体が異物を異物として認識し排泄するためには、体内に抗体が形成されなければならないという考えです。そして、予防接種によってあらかじめ抗体をもっておけば安全と考え、抗体をつくらせるために、病原体や毒素などの抗原となるものを体内に注射する予防接種が普及していったわけです。すなわち、免疫をつけるには実際に病原体と遭遇しなければならないという考えが根本にあるわけです。この考えは、1940年以前の昔話です。この考えに従うならば、病原体の数だけワクチンが用意されなければならないことになります。

 
 しかし、そんなに私たちの体は愚かなのでしょうか? 実際は、ある自転車の乗り方をマスターすると、別のタイプの自転車でも自由に乗りこなすことができるように、あるいは、バランス感覚が発達して自転車以外の乗り物にも対応できる能力がつくように、必ずしも特定の病原体の免疫を得るために、その病原体とわざわざ遭遇させなければならないということはないのです。学習することで、同じような病原体を排除することができるようになるのです。すなわち、抗体がなくても免疫をもっていることのほうが多く、抗体がなければ免疫がないという考えは正しくないのです。
 

 本当の免疫を獲得させたければ、応用力がつくように体に学習させなければなりません。それには自分で考えさせ、自分で解決させることがいちばんなのです。そのための学習教材として子どものかかる病気は存在し、本来、成長とともに段階を踏んで学習するようになっているのです。

 ところが、一般社会のみならず、医学・医療関係に携わっている人にまで、免疫=抗体という考えが常識として定着してしまっています。免疫学者はそうではないと言っているにもかかわらず……。同様に、科学者がインフルエンザワクチンには効果も意味もないと発言したとしても、資本主義社会の中で企業や政府というフィルターを通して一般社会に伝達されると、インフルエンザワクチンは受けたほうがよいというニュアンスで伝えられ、マスコミがそれを一般社会に伝達します。そして、正しくないことが真実であるかのように広まってしまうのです。予防接種の歴史もまさにそうした壮大な作り話によって、疑う余地のない神話となっていったのです。実は、そこにはある意図があるのです。

血液の免疫システム

 では、実際の血液の免疫システムについて大まかに説明したいと思います。この本のなかでいちばんこむずかしい部分ですが、少々がまんしてください。

 免疫の大きな部分を担っているのは白血球ですが、白血球には、単球、顆粒球、リンパ球の三種類があります。そして、単球はマクロファージ、顆粒球には、好中球、好酸球、好塩基球の三種類があり、リンパ球には、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、B細胞、T細胞
などがあります。
 白血球……単球……マクロファージ
 顆粒球……好中球、好酸球、好塩基球
 リンパ球……NK細胞
 B細胞
 T細胞……キラーT細胞
   ヘルパーT細胞(キラーT細胞を活性)
   サプレッサーT細胞(キラーT細胞を抑圧)
 マクロファージは、生体内に侵入した細菌、ウイルス、死んだ細胞などを捕食し消化します。顆粒球の好中球は、強い貪食能力をもち、細菌などの体内の有害物を除去します。また炎症初期で活躍します。リンパ球のNK細胞は、殺傷力が高く、常に体内をパトロールし、ウイルス感染細胞や癌細胞をみつけると、単独で直接殺します。

 私たちの体にウイルスや毒素が入ると、各免疫細胞が順次反応します。たとえばウイルスが侵入すると、マクロファージがウイルス侵入の信号(サイトカイン)を放出し、それを受け取ったNK細胞、キラーT細胞、B細胞が順番に活動を開始します。ウイルス感染後、最初に活動するのがNK細胞、次に働くのがキラーT細胞で、B細胞による抗体生産は最終手段となります。

 B細胞は骨髄(Bone marrow)でつくられ、抗体をつくる働きをしています。抗体はタンパク質で免疫グロブリンと呼ばれ、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があります。この中で予防接種との関連で検査される抗体価は、IgMとIgGです。IgMは最初にできる型番のようなもので、型ができたあとに永続的に存在するIgGという抗体ができます。またIgGは母親の胎盤から胎児に受け継がれます。このIgGの抗体価が検査され、免疫をもっているかどうかが判断されるわけです。本来、IgMとIgGは血液中に異物が入るなどの異常事態が起こったときにつくられるものですから、それらの抗体価は免疫の指標というよりは、免疫低下の指標というほうが適切ではないかと考えます。そして、IgMの抗体価は急性の、IgGの抗体価は慢性の血液の濁り(血液中に存在する異物量)の程度をあらわすと考えられると思います。

 IgAは、私たちの涙、唾液、母乳、体全体の粘液の中に存在し、粘膜での防衛に関与します。赤ん坊は母親の母乳を通してIgAを受け取ります。IgDはB細胞を刺激する抗体で、IgEはアレルギーのある人の中で活発に働きます。

 T細胞は胸腺(Thymus)でつくられており、B細胞、T細胞は主に血液の中で活動します。
よく抗体だけが異物や変化した細胞を認識できると思われていますが、T細胞も異物を認識することができます。口や胃腸の粘膜といった自然免疫系を通して異物が侵入した場合は、T細胞がきちんとそれを「非自己」であると認識できるので、キラーT細胞がしっかり働くことができるのです。ですから細胞が毒やウイルスの侵入を受けた場合、キラーT細胞がそれを認識して、マクロファージとともに排泄することができます。

 そのほかにNK細胞があります。NK細胞はキラーT細胞と組んで、微生物や毒素やウイルスを排泄することができます。ですから、抗体が生成されなくてもキラーT細胞によって毒やウイルスをとり除くことができるのです。

 仮にウイルスなどの病原体の増殖がキラーT細胞による排泄を上回り、一時的に抗体がつくられたとしても、自然免疫系から侵入した場合は、キラーT細胞が異物と結合した抗体を容易に排泄できます。一度に大量の異物が直接血液中に侵入することがないため、免疫系が混乱することがなく、異物の認識がしっかりできているからです。

 B細胞は抗体をつくります。B細胞は細胞よりも小さなウイルスなどを認識することができ、専用の抗体をつくってウイルスなどと結合します。いったん抗体が付着すると、キラーT細胞やNK細胞、マクロファージ、好中球などがやってきて食べてしまうわけです。

 先ほど抗体は最終手段だといいましたが、どんなときに抗体が必要になるかというと、ウイルスや毒が大量にある場合です。そういう場合は、とりあえずウイルスや毒を不活性化させるために、それらと特異的に結合する抗体をつくるわけです。それは同時に、異物があるという目印となります。また、免疫がうまく働くことができない場合にも抗体をつくります。キラーT細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球などが未解決なまま置き去りにしたウイルスや毒などがある場合、B細胞がそれらに対する抗体をつくります。血液中に残っている異物に目印をつけていき、キラーT細胞などが食べにくるのを待つわけです。

 このように、免疫にはさまざまな細胞がかかわっていることがわかっていただけたと思いますが、単純にいうと、免疫組織がうまく処理できないものにつけられる目印が抗体だということです。つまり、通常の免疫機能が作用しているときには、抗体はほとんど必要ないわけです。

 免疫システムはさまざまなチャンネルをもっています。たとえば、毒が血管に入るとB細胞が活性化し、キラーT細胞は不活性化します。逆に、毒が血管の外側にある場合はキラーT細胞の管轄となります。ですから、キラーT細胞がたくさんあるときは、そのキラーT細
胞が毒素や病原体を殺しているわけです。

 このように、血液の免疫システムをみただけでもこれだけの防御機構があるにもかかわらず、ワクチン開発は、たくさんある免疫の中の一つでしかないIgG抗体だけにしか焦点があてられていないのです。

つづく。