2002年のBBC(英国放送協会)のホメオパシーの有効性を否定する番組はいかにして捏造されたか?

BBCは2002年11月26日に「ホライゾン」というホメオパシーについての1時間半のドキュメンタリー番組を制作しました。

この番組はBBCによるホメオパシーバッシングの先駆けであり、21世紀の世界のホメオパシーバッシングの先駆けとなりました。

「科学番組」と「リアリティ番組」を融合したような生放送番組で、ホメオパシーは数年前より「何の物質も入っていないので、作用すると言うことが不可能」と言われている。しかしそれに反してホメオパシー商品のセールスは伸びる一方というのが現状。そこで、BBCがホメオパシーについて取材をするというストーリー。

そして、以下の紹介が続きます。

○ ホメオパシーレメディー希釈の説明。
○ プラシーボという人もいるが、それではどうして動物に効くのか?
○ 現代医学に見放されたがホメオパシーですっかり元気になった女性のコメント。「何が自分を治したか、はっきり分かっている。それはホメオパシー以外にない」
○ 女王陛下主治医、Dr.ピーター・フィッシャーへのインタビュー(彼の花粉症についての実験について。)
○ 原物質が入っていないのにホメオパシーレメディーが作用するのは、「水の記憶」だと言う科学者がいる。ということで、ベンベニスト博士インタビュー。
○ 以下に示したアイルランドのベルファースト・クイーンズ大学の女性科学者、エニス教授が、ヒスタミンを原物質がなくなるまで薄めたものを、人間の血液細胞に入れることで、反応が起こるかどうかを実験。水には記憶があるという結果がでる。
○ 同じ実験をBBCが取材費をかけて実験し、結果をホメオパシー賛同派と懐疑派に見せるというもの。チンピラ的人間のひとりであるランディというアメリカ人が「自分の出す条件下でその実験を証明したら百万ドル与える」という演出も用意。実験結果は「水には記憶がない」というもの。ランディは、百万ドル払わなくて済んでホッとした表情。しかし「更なるリサーチの価値はある」と締めくくる。

問題は、最後のエニス教授の実験の再現実験です。
このBBCのホメオパシーの放送は、その後、英国、そして世界に大きな影響を及ぼしたことは皆が知るところです。BBCによる自称、厳密な実験結果が「水には記憶がない」ということを支持するものであったため、ホメオパシーには科学的根拠がないというこれまでのホメオパシー反対論者の唯一の根拠を後押しする形となりました。

これによって英国ではホメオパシー否定派によるホメオパシーバッシングの勢いが増し、ホメオパシーは衰退していく傾向になりました。当時のロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシーと姉妹提携していたザ・カレッジ・オブ・プラクティカル・ホメオパシーのデビッド・ハウ学長もこのBBCの放送内容が大きな波紋を起こしており、危機感をもって嘆いていたとうことです。

奇しくもベンベニスト博士が水の記憶の論文を発表した翌年に、「あの実験は幻想だった!」とする反対論文が紹介され、ベンベニスト博士が世界の物笑いの種となったように、エニス教授の実験結果が否定される形となりました。
エニス教授は、ベンベニスト博士の追実験をしており、ベンベニスト博士の研究結果の基本的妥当性を確認しており、またここで取り上げたオリジナル実験による水の記憶を証明する実験を2回行っています(Brown &Ennis 2001)。
ホメオパシー否定派にとってベンベニストを笑い者にすることに成功したものの、他の者も笑い者にする必要があったのでしょう。エニス教授が生け贄にされたわけです。

しかし、エニス教授も黙ってはいませんでした。BBCに公開実験の詳細プロトコルの開示を求め続けました。

このBBCの放送が十分な効果を発揮した後の二年後、BBCが情報開示に応じたことで、BBCのエニス教授の再現実験はインチキであることが発覚しました。以下、『世界の一流有名人がホメオパシーを選ぶ理由』からご紹介します。

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エニス教授がこの実験に使われたプロトコルの詳細を2004年にようやく見せてもらうことができたとき、自分が行った実験とは似ても似つかないものだったことに驚いたと話している。また、『ホライゾン』が起用した研究者は低級な医療技術者で、大学院の学位もなく、また過去に一度も好塩基球に関する研究を発表したこともないことが明らかになった。

さらにこのプロトコルでは、ホメオパシー薬(高度希釈したヒスタミン)を添加する前に、好塩基球を死滅させると言われている化学物質が使われていたことも明らかになった。

このようにずさんな実験をもって、ホメオパシー薬の効果を適切に評価することは、文字通り不可能だった。

著者は、アメリカのテレビ番組シリーズ『20/20』のインタビューを受け、このBBCの実験が欠陥だらけであることの根拠を示した。『20/20』のプロデューサーは、エニス教授をアドバイザーに据えることを約束したが、研究を行う前に、この調査設計がずさんで欠陥があることを知らされると、エニス教授に相談すると約束しただけで、必ずしも教授の助言を受け入れることまでは約束していないと述べた。

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つまりはこういうことです。
「ホメオパシーのレメディーは、何の物質も入っていないので作用することが不可能」という嘘を数年前よりマスコミを通じて流してきたものの、ホメオパシー商品のセールスは減るどころか伸びる一方という現状に危機感を抱いたチンピラ的人間が、BBCの上層部に潜伏する同胞に依頼して、ホメオパシーをインチキ療法にしたてるための番組を企画したという流れではないかと思います。

最初ホメオパシーはこういうものですよと説明し、肯定的な意見を紹介しながら最後はホメオパシーの有効性の科学的根拠となりえる実験はインチキだったというおちで、見る者に大きなショックと失望、そしてホメオパシーへの不信を与えるために制作された番組ではないかということです。そしてあとはホメオパシー否定派が最後のBBCの公開実験の部分を大々的にとりあげ、ホメオパシーはインチキであると風評を流すために制作された番組ではないかということです。

そのためにランディーというチンピラ的人間を使って演出し、また実験者もわざわざ未熟な者を起用し、その低級実験者に欠陥だらけの実験をさせ、それでも万が一に備え、つまり実験が絶対に失敗するように、事前に好塩基球を死滅させる化学物質を入れていたということです。

こんな卑怯な実験は聞いたことがありません。卑怯にも限度というものがあると思います。ここまで卑怯で大丈夫なのだろうか?と思わずホメオパシー肯定者も心配になるほどの卑怯さです。近代まれにみる卑怯さと言っても過言ではないと思います。そういう意味では逆に評価してもよいのかもしれません。

結果はもちろん、エニス教授の実験結果を否定するもの、すなわち、「水には記憶がない」となりました。それでいて実験を見守るランディーさんは、ホッとした表情を見せるわけです。これがやらせでなくて一体なんなのでしょうか?

ランセットといい、日本学術会議といい、BBCといい、朝日新聞といい、世界の学術機関もマスコミも一体どうなっているのでしょうか?それを探るヒントがスイスのホメオパシー事情に見ることができるかもしれません。

ところでBBCの捏造はこれだけにとどまりません。

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エニス教授の研究(『世界の一流有名人がホメオパシーを選ぶ理由』から)

化学の教授(メデレイン・エニス博士)の主導で行われた重要な研究がある。この教授は、もともとホメオパシーに懐疑的な立場であったが、現在はその著しい効果を認めるようになった(Belon et al., 2004)。

別々の大学と提携する四つの独立の研究所が、アボガドロ定数を超えるヒスタミンの溶液を使って、三六七四回に及ぶ実験を行った。アボガドロ定数を超えるということは、摂取されるなかに原物質の分子が残存していないことがほぼ確実であることを意味する(一〇〇分の一の希釈を一五〜一九回繰り返す。すなわち、100-15 から100-19 の濃度ということになる)。研究者は、ヒスタミン溶液には好塩基球と呼ばれるタイプの白血球を抑制する作用があることを発見した。その効果は、全般的にかなり顕著なものであった(P= < 0.0001)。実験に使われた溶液は研究所ごとに独自に用意され、被験者はテスト溶液の中身については知らされず、データ解析は、実験のどの段階にも関与していない生物学専門の統計学者によって行われている。

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